2020-5/20

 バイト先には客も使う普通の入り口から入ることになっていて、おれが昨日店に入ると入り口すぐのいちばん目立つところに新しいラックができていて、そこに大量のマスクが陳列されていた。なんだか悲しくなってしまった。使い捨てのタイプは50枚入りで2980円(+税)。洗えるタイプは2枚入りが480円(+税)、ピンクとグレーの2色展開。マスクの現在の相場が全く分からないけれど、使い捨てマスクの値段がこの前値付けしたグラミチのズボンと同じと考えたときにはやっぱりちょっとおかしくないか、と思ったりした。それがまた面白いように売れるんだから分からない。需用・供給の曲線が描かれたグラフがあって、2つの曲線が交わる場所ってもしかしたらここのバイト先なのかもしれない。

 

 そもそも今おれは衣服類を専門に扱うリユースショップでアルバイトをしている。買いに来る客もいれば売りに来る客もいる。10円で買い取って1300円で売ったりしている。阿漕な商売だ。買い取る際にお客さんに承諾書を書いてもらう必要があって、その承諾書には職業のチェック欄が設けられている。会社員、自営業、公務員、学生、主婦、アルバイト、みたいな感じで。そこをチェックすると、強面な風貌の人が公務員だったり、だいたい同年代の人が自営業であったりしてなかなか面白い。それが40歳とか50歳で、パート・アルバイトの欄にチェックをする男の人を見るとなんだかとても悲しくなってしまう。もちろん何らかの事情があってのことかもしれないし、つく必要の全くない嘘である可能性もある。マジで何のための嘘やねんって感じだけど。そんな中年のフリーターが、服を売りにきて、それが1着10円とか50円とかで買い取られ、中には1円でひきとられるものもあったりして、50着持ってきて500円にもならないのに、「はい、この金額で満足です」なんて低姿勢でこられたらこっちが凄い悪いことをしている気分になる。こっちだって苦渋の思いで安く買い取って高く売ってるんだ、ごめんよ、今日は買取金額482円で引き下がってくれ…。それでも笑顔を絶やさずになんだったら満足げに帰っていくその背中を見ながらおれは己の無力さをただ噛み締めるだけだった…。バイトがんばろう。