2020-4/14

 好きな〇〇なんなん?大喜利が苦手だ。

 今日バイト中に、パートの人に「今バイト以外の時間何してんの?」と聞かれた。少女漫画読んでます、とは言えないから、「だいたいYouTube見て時間潰してますねー」と答えた。嘘ではない、今日だってオズワルドのニューラジオを見たし、シソンヌのコントを見た。するとパートの人が「YouTube好きなん?何見てんの?」と食いついてきたから、「あ、YouTuberはあんま見てないです、芸人の動画とか見てます」と答えると、「お笑い好きなん?私も今シソンヌめっちゃハマってるねん!」と思わぬところで食いつきを見せた。シソンヌ好きなんや、てか知ってるんや、おれも今日見ましたよ、と驚いた。そこからお互いお客さんの対応に入ったから話は流れたんだけど、また暇な時間が来たときに、さっきのパートの人が別のもう1人のパートの人に「またお笑い語れる大学生増えたで」と言っていた。そのとき同じブースにいたのはおれとその2人だけだったから、もう1人のパートさんがおれに「好きな芸人は誰なん?」と聞いてきた。遂に来るのか。この手の質問が。大学に入って自己紹介で趣味は音楽を聴くことです、と言うと必ず「好きな歌手は誰なん?」と聞かれていたことを思い出す。正直にハマっている好きなインディーズのバンドの名前を出しても白けさせるし、みんなが知っているようなバンドの名前を出すのはおれのサブカルプライドが許さない。おれは大学1回生の春、大阪からの通学電車2時間半の間にずっとこの問いの最適解を考えていた。そして出てきた答えが「andymori」だった。おれは実際andymoriの音楽がめちゃくちゃ好きだし、バンドをちゃんと好きな人は絶対に知っている名前だ。その人が本当にバンドが好きなのかふるいにもかけられる最適解だと今でも思っている。だから今でも好きなバンドを聞かれたときはandymoriと答えるようにしている。ただ芸人については準備を全くしていなかった。聞かれたときに頭の中でさまざまな芸人が浮かんでは消えていった。10組ほどの芸人がコンマ2秒で頭の中を駆け巡る。「く、空気階段」と口にした際の微妙な空気をおれはよく知っている。andymoriという完璧な回答を見つけるまでにおれが何度も答えに失敗して生み出してきた空気だ。答えを間違った。一瞬でおれは悟った。語尾に「って…知ってますかね?」と付け加えた。いちばんダサい。するとパートさんが「本物やね」と一言。いちばん恥ずかしいからやめておくれ。どうやらお笑い向上委員会を見ていたらしく空気階段の存在は知っていたらしい。ラジオが好きで空気階段のが面白いんですよ、と言い訳しようと思ったけれどなんか話が流れてしまっていたようだからやめた。うわー、めっちゃコアなお笑い好きみたいなってもうたなーと作業をしながら思っていた。誰と答えるのが最適解だったのだろう。残りのバイトの時間はずっとこの答えを考えていた。終了間際に答えが降ってきた。見取り図ではないだろうか?M-12年連続ファイナリストで知名度もあるだろう、それでもお笑いにある程度興味が無いと分からないであろう絶妙なライン。これが答えだったなぁとずっと後悔が止まらなかった。そういやパートの人は千鳥が好きって言っていたなぁと相席食堂を見ていると天竺鼠が出てきた。天竺鼠でも良いな。見取り図か天竺鼠と答えよう。たぶん最適解が見つかった。ような気がする。ただこれが最適解なのか試す機会は二度と訪れない。これは確実に。