2019-8/7

 ここ最近、狂ったようにシフトに入れられている。お盆の期間の1週間のシフトを全部×で出したらそれ以外の週に4日とか5日入れられる羽目になった。生活がおんぼろスーパーのしょうもないバイトに蝕められている。嫌気がさしてきた最近は出勤したときの挨拶もどんどん雑になりつつある。今日も「おざす」と快活に挨拶をキメて、社員から仕事を引き継ぐ。加工リストの一番上に書かれていた「葱 12」は仕入れのメモ書きだと決めつけ、30分くらい売り場の補充をした後、加工に取り掛かろうと野菜が入っている冷蔵庫を開けた瞬間に我が目を疑った。そこにはおれの身長より高く積まれた大量の白葱が鎮座していた。その数なんと12個。「葱 12」。信じられない。人が人生で加工していい葱の数を余裕で超えている。葱のキャパオーバー。これは一刻も早く取り組まねば、と加工に取り掛かる。一つの段ボールにだいたい葱が36本。それを3本ずつ取って、長さを揃えて切って、テープを巻いて、袋詰め。鬼の単純作業。これ×12。葱地獄もいいところだ。葱を切って、袋詰め。葱を切って、袋詰め。視覚はもちろん、葱の匂い、葱の触感にノイローゼを起こしそうになってしまう。なにか葱以外のことを考えながら作業しないと本当におかしくなってしまいそうだった。ひたすら、考える。

 

「そういえば中学校のときGANTZのネギ星人に似てるからあだ名がネギ星人やった友達おったなぁ」

「その子と中3のとき毎日一緒にお昼食べるくらい仲良かったのに高1の夏にTwitterで会話した次の日とかにリムられたなぁ」

「レジの山本さん、ナチュラルに今日、レジもう一人誰やったけ?ってタメ口で話してきたなぁ」

「それに戸惑って、え?って返したらいちばん気まずい間で、あ、今日ってレジもう一人誰でしたっけ?って敬語に直して話してきたなぁ」

「今日他店舗からヘルプで来てた人、おれに大学どこか聞いた後、自らおれは同志社やねんけどって言ってきたんどういうつもりやったんかなぁ」

「社員って誰かに似てるよなぁ」

「9日バイト入ってるけど、ゼミの用事入ってもうたから無理なりましたって早く言わなあかんよなぁ」

「葱多いなぁ」

「明日ゼミで集まる前にやっとかなあかんかったこと何も終わらしてないの良くないなぁ」

「家出たときに廊下におったムカデおらんくなってたらいいなぁ」

「飼ってる犬や猫に奇をてらった名前つけたら獣医に診てもらうときに恥かくなぁ」

「社員はピスタチオの小沢に似てるなぁ」

近鉄八尾駅前でいつもみたいな共産党じゃなくて自民党のビラ配ってたら受け取ってまいそうやなぁ」

「女でピスタチオの小沢に似てるの可哀想やなぁ」

「親父のスマホの検索履歴にあったら嫌なもの、”水野美紀 流出”」

「にしても葱多いなぁ」

「日本人やのに金の鳥からに並ぶ人どういう心情やねんやろなぁ」

「スーパーでカート集めてるおっさんの生き甲斐ってなんやねんろなぁ」

「葱多すぎひん?」……

 

結局葱だけで4時間近くかかってしまって、それ以外に頼まれた加工を終わらせることがほとんどできなかった。次に出勤したときにまた怒られるのかもしれない。

 

「次に出勤したときに怒られる理由を探していたら眠れる夜はなくなってしまいそうだなぁ」